独立行政法人労働者健康安全機構 九州労災病院

関節再建センター

スタッフ紹介

  • 河野 勤

    • 整形外科部長
    • 関節外科部長
    • 関節再建センターセンター長
    • 診療情報管理室室長

    (1996年卒)

    河野 勤
    河野 勤
    診療科
    膝関節外科/股関節外科
    所属学会
    日本整形外科学会整形外科専門医

関節再建センターについて

近年、当院整形外科では多くの人工股関節手術や人工膝関節手術が行われるようになってきました。関節骨切り術を含めた、これらの関節再建手術治療が、当科におけるひとつの特徴となりつつあります。その事を広く知っていただく為にセンター化することになりました。この機会に、外来における手術準備や入院時周術期ケア、そして術後リハビリテーションについて、よりいっそう安全に、そしてより良い治療が行えるように院内のしくみを見直しています。日常生活や職場への復帰が早期に行えるような手術方法や術後リハビリテーションを工夫し行っていきます。

主に成人の股関節や膝関節の関節再建を目的とする手術療法を行います。対象疾患は変形性関節症、骨頭壊死などです。手術療法は人工関節手術や人工関節再置換術、そして関節温存手術(骨切り術)も行います。

人工関節外来について

人工関節置換術や人工骨頭置換術を受けた後、定期的に検査を受けていない患者様を対象に新しい画像技術「トモシンセシス」を利用した専門外来を始めました。

トモシンセシスとは新しい断層撮影法を行う画像診断装置です。CTに比べて被爆量がかなり少なく、しかも、体内金属近辺のアーチファクトが少ないので人工関節周囲の骨組織を明瞭に抽出できます。したがって、人工関節周囲骨欠損やゆるみの評価に優れています。北九州市ならび近辺では最新鋭の装置となります。

人工関節がこすれあうと、摩擦によりポリエチレンの屑が周囲に溜まり、周囲の細胞が反応して骨吸収(オステオライシス)が起きると言われています。人工関節周囲の骨組織が吸収されると支えが弱くなり、人工関節の緩みにつながっていきます。十数年前からクロスリンクポリエチレンが使われるようになり、その後の人工関節におけるポリエチレン摩擦はかなり減っています。一方で、それ以前の人工関節は術後15~20年以上経過していることになり、少なからず人工関節周囲の骨変化を起こしているのではないかと懸念されます。もともと人工関節には神経がありませんので、こすれただけでは症状は起こりません。ゆるんでも最初は症状が軽いことがしばしばです。緩みが進んで、機能障害が起こったり、症状が強くなったりすると再置換せざるを得なくなりますが、すでに骨欠損が大きくなり手術が困難な症例も少なくありません。早期発見はよりよい対処につながります。

トモシンセシス

新しい診断機器による人工関節チェックを希望される患者様、特に人工関節手術後長期経過し定期的な人工関節の診察を受けていない患者様は是非かかりつけ医にご相談ください。

関節痛(かんせつつう)について

身体にとって痛みとは

股関節に起こる痛みは患者様にとって嫌なものです。しかしながら、何処がどの程度悪いということを教えてくれる、アラームのようなものでもあります。必ずしも痛んだところが病気ではないこともありますが、少なくとも悪いところがあると教えてくれます。

なぜ痛みはおこるのか?

痛みの起こり方には、いろいろありますが、多くの疼痛は組織障害性といわれます。体の一部の組織が壊れると、それに反応していろんな組織中の物質が出てきます。それが炎症を起こしたり、直接に伝わったりして、神経の末端である神経終末、即ち痛みのセンサーを刺激します。それが脳に伝わり、”痛い”と感じるわけです。

痛みのセンサーは関節のどこにある?

関節の痛みのセンサーは自由神経終末と呼ばれているものです。機械的刺激、様々な炎症性物質による化学的刺激や、熱によっても、刺激されて、痛みを感じるようになります。痛みのセンサーは関節全体に一様にあるわけではありません。あるところと無い所、鈍感なところと、敏感なところがあります。関節は二つの骨の端が関節軟骨に覆われており、その周りを関節包が被っています。この関節包には痛みのセンサーが豊富です。膝関節に水が溜まったりして、水を抜いたり、注射をされた方がおられるかも知れません。細い針で注射しても、関節包を刺す瞬間はやはり痛いと言わることが多いようです。関節包に痛みの神経終末が豊富に存在しているからです。

骨の外側を被っている骨膜(こつまく)という膜組織がありますが、この部分にも痛みのセンサーがたくさんあります。骨折して痛いのはこのためだろうと思われます。興味深い事に骨の内側には痛みのセンサーが殆どありません。骨折のズレを直すために、その骨に細いワイヤーを通して引っ張ることがあります。その時、骨の外側にある骨膜には麻酔薬を注射できますが、骨の中には針は通りませんので局所麻酔ができません。しかし、外側の骨膜に十分な麻酔をすれば、ワイヤーを骨の中に通しても痛みは起こりません。骨の中には痛みのセンサーが殆ど無いので痛くないのです。

痛みのセンサー

痛みのセンサーは関節軟骨のすぐ下にあるスポンジ状の骨や、滑膜にもあります。すなわち、関節の多くの組織に痛みのセンサーがありますが、関節軟骨には、この痛みのセンサーがありません。関節軟骨は常に、体重がかかったり、擦りあったりします。もし痛みのセンサーがあったら、痛くて動き辛くなるかもしれません。変形性股関節症という、股関節でもっとも多い病気は、関節軟骨に始まるので、早い時期には痛みがほとんどありません。従って、病気が進んでから気づいたり治療を受けたりすることが多くなります。

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