膝関節
年を重ねてきますと膝が変形する変形性膝関節症が起こってきます。特に日本人は0脚が多いため内反型変形性膝関節症(内側の軟骨がすりへる)になる方が多いのです。
「膝が痛い」と感じて病院に行き、「年だから痛いのは仕方がない」と言われたことはありませんか?しかし、実際には変形性膝関節症の進行の程度によってさまざまな治療の方法があります。
変形性膝関節症について
- 内反変形(O脚)
- 膝内側に体の重力が片寄ってかかる
- 内側の軟骨のすり減り
- 内反変形
治療の主眼は、上記の悪循環を断ち、変形の進行を止めることです。手術をしない方法としては、外側を高くした足底板(靴の敷皮のように使用する)で膝の横ゆれを防ぐこと、膝周囲の筋の機能を向上させる訓練、関節内へのヒアルロン酸の注入を行います。また、半月(板)症状が前面に出ている場合は、鏡視下に半月(板)の処置を行います。
変形が中等度の場合にはO脚を矯正して、関節に平等に力がかかるようにし、膝の動揺を防ぐため、脛骨という膝の下の骨を手術する方法(高位脛骨骨切り術)が進行を止める上で極めて有効です。とくに変形が強くなった場合には人工膝関節置換術という手術が非常に有効です。当院では年間100例以上の人工膝関節置換術を行っており、非常によい成績をおさめています。
よく曲がる人工膝関節
これまでの人工膝関節の曲がる角度はせいぜい110度程度でした。しかし、現在当院での人工膝関節では屈曲130~145度も可能となる例も出ています。
ポイントは3点あります。
- 曲がる機種を使用。
- 最新の手術手技を用いる。
- 曲がるためのリハビリ。
130度以上膝が曲がりますと畳からの立ち上がりなど、日常生活動作が非常に楽になります。
人工膝関節置換手術Q&A
- 痛みはとれますか?
- この手術の最大の目的は痛みをとることです。きちんと手術を行えば痛みはとれます。
- 年をとっていても手術ができますか?
- 当院では85歳程度までであれば、手術を考えます。年齢自体は問題ではなく、全身的な状態により手術が可能かどうかで決まります。高齢になってきますと高血圧、心臓病や糖尿病などの合併症を持った方が多くなってきます。手術前に心臓の検査や血液検査を必ず行い、合併症のコントロールが可能であれば手術は可能です。
- 手術は痛いでしょう?
- 手術の時は麻酔をきちんと効かせて完全に痛みをとってから行います。手術後も背中に鎮痛薬を持続的に投与するチューブを入れていますので痛みをおさえられます。 完全には痛みをとることはできませんが、痛み止めの坐薬や注射で痛みを緩和することもできます。
- 本当に膝が曲がるのですか?
- 現在行っている手術の方法、および手術後のリハビリの方法ですと膝の曲がる角度は平均130度以上です。 しかし、手術前に曲がりが悪い方は手術後も思ったほど曲がらない場合もあります。
- 金属を入れて足が重くなりませんか?
- 人工膝関節の重さは約400gで、さほど重たいものではありません。身体の中に入れても重さを感じることはありません。
- どれぐらい耐久性がありますか?
- 通常の生活であれば、15年以上の耐久性があります。体重が増えると人工関節に負担がかかりますから、体重を増やさないようにしましょう。
- 金属アレルギーがあるのですが?
- 金属アレルギーは、非常にまれですが可能性はあります。アレルギーがある場合は、手術前に必ず主治医に伝えてください。
- リハビリテーションの期間はどれくらい?
- 通常、手術後退院まで3週間前後としています。手術の翌日から膝を曲げる訓練を開始し、数日で歩行訓練が始まります。当院ではリハビリを担当する先生も多く、しっかりとしたリハビリを受けることが可能です。
- リハビリで電気はあてられますか?
- いわゆるマイクロという治療はできませんが、温める治療は問題ありません。鍼治療は細菌が入る可能性があるので禁止しています。
- 正座はできますか?
- 正座ができるくらい曲がる方も稀にいます。しかし、その場合も正座はお勧めしていません。 人工関節に負担がかかり長持ちしない危険性があるためです。
- スポーツはできますか?
- 軽いスポーツは可能です。例えばゲートボール、ゴルフ、水中ウォーキングなどです。 テニスやスキーなどは軽めには可能です。
- 旅行に行けますか?
- 極端に長い距離や登り坂を歩くと、人工関節に負担がかかります。旅行に行くときには、人工関節への負担を軽くするために、杖の使用をお勧めします。
- 飛行機に乗れますか?
- 飛行機に乗る前の金属探知機の検査で人工関節が感知されることがあります。飛行機に乗る際は、主治医に人工関節が入っていますという証明をもらうことも可能です。
- かなり費用がかかりますか?
- 人工関節の手術は費用はかかりますが、高額医療の対象になります。