関節リウマチ
今年、慢性関節リウマチから関節リウマチと呼び名が変わりましたが、相変わらず直りにくい病気です。 しかし、関節リウマチに対する薬物治療もかなり進歩して来ました。薬物治療の原点は”早期発見、早期治療”です。このコーナーでは当科で行っている関節リウマチの治療に関して記載しています。
関節リウマチには”リウマチの木”という概念があります。リウマチの芽が最初出ますが、まだ関節の症状はありません。
次第にリウマチの木は大きくなり、花が咲き出します。花は関節の痛みとなり、リウマチの症状が出て関節リウマチの診断がつきます。通常40歳頃リウマチの発症が多いようです。木がさらに大きくなると関節の破壊へと進行します。70歳頃には木は枯れリウマチも枯れますが壊れた関節は元へはもどりません。リウマチの木を出来るだけ早く切り倒せれば関節の症状も悪くなりません。そのためには薬物治療がとても大事です。また、関節が壊れてしまった後は手術が必要となってきます。
関節リウマチに対する薬物治療
関節リウマチの薬として、主に4種類の薬を使います。
- 消炎鎮痛剤
- いわゆる痛み止めです。関節リウマチによって関節に炎症が起こりますが、その炎症を抑える事により痛みを軽くします。炎症を火事に例えますと火事を消す水の役目をします。
- ステロイド剤
- 炎症を抑える力が非常に強いのですが、多く使いすぎますと、骨がもろくなる骨粗しょう症などの副作用もでてきます。炎症を火事に例えますと火事を消す化学消化剤のようなものと考える事ができます。
- 抗リウマチ薬
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消炎鎮痛剤やステロイド剤は炎症を抑えますが、炎症を引き起こしているリウマチ自体には効果はありません。従ってリウマチの治療の中心になるのが、抗リウマチ薬です。残念ながら抗リウマチ薬でも関節リウマチは簡単には治りません。
しかし、適切な抗リウマチ薬によって関節の破壊を抑える、または遅らせる事が可能となってきましたが、抗リウマチ薬は効果が出るまでの期間が長い、副作用がある、長期間服用すると効果が薄れてくる等の問題点があります。
リウマチ専門医による適切な診断と処方が非常に大事です。副作用もあるため、1~2ヶ月毎の血液検査は必要です。
- 胃薬
- 消炎鎮痛剤などにて、胃炎や胃潰瘍が起こる可能性が高く、予防的に胃薬を処方しています。
関節リウマチに対する治療戦略1
関節リウマチの発病、発症に関しては、木の成長に例えてリウマチの木という概念についてお話しましたが、成長する木に対する治療戦略があります。図を参考にしてお話しますと、特に女性では40歳頃に関節リウマチの症状が出てくる方が多いことはわかっています。しかし、実際には関節リウマチは身体の中では30歳頃には起こっていると考えられています。
関節リウマチに対する治療戦略としては、従来はピラミッドモデルが一般的でした。ピラミッドは普通は縦に向かってのびていきますが、図の中では年齢がまして、リウマチの木が成長するとともに、どのような治療をするかをわかりやすくするためにピラミッドを横にしてのばしています。ピラミッドモデルでは、関節リウマチの症状に対して治療方針が決まっていました。しかし、この方法には幾つかの問題点があります。まず、治療を開始する時期が遅い点です。図に示しますようにピラミッドのモデルでの治療開始はリウマチの木が大きくなり始めた頃になっています。つまり、関節の症状が起こってから治療が始まっています。従って、関節の破壊を抑えることが困難です。また、最初は軽い治療から始まり、強い薬は関節リウマチがかなり進行してから使用するため、治療が後手後手になってしまいます。以上より、ピラミッドモデルでは関節リウマチを抑えることが困難と考えられています。
関節リウマチに対する治療戦略2
近年では、関節リウマチに対する治療戦略の主体は図に示します”のこぎりの歯”戦略などが一般的です。薬物治療のページでお話しましたように、関節リウマチでは早期から抗リウマチ薬をつかって、リウマチの木を切り倒すことが大事です。
従いまして、図に示しますように、ピラミッドモデルより早く治療を開始し、その中心は抗リウマチ薬です。のこぎりの歯は横軸は病気の経過を、縦軸はリウマチの強さを表しています。最初の抗リウマチ薬(D1)を使用してリウマチが落ち着いてきて、その後再びリウマチが強くなってきた時に第2の抗リウマチ薬(D2)を使用します。さらに次々と抗リウマチ薬(D3,D4)を効果がなくなれば使用していきます。
”のこぎりの歯”戦略では、薬物治療のページでお話しました、消炎鎮痛剤やステロイドなどの薬物は表示されていません。しかし、抗リウマチ薬はその効果が出るまでに時間がかかるため、その期間、ステロイドや消炎鎮痛剤を適切に使用してリウマチの症状を軽減していきます。
ステップダウンブリッジ戦略は欧米で主に使用されている治療方法で、最初に一気にリウマチの木を切り倒す事をねらっています。しかし、一度に大量の薬を使用するため、体格の小さい日本人では身体への負担が大きいと考えられており、日本ではあまり用いられておりません。しかし、幾つかの抗リウマチ薬を合わせて用いる事は行われています。当科ではリウマチ専門医が、患者様一人ひとりにあった抗リウマチ薬を処方し、治療を行っています。
関節リウマチに対する手術療法
関節が壊れたら、どうされますか?リウマチだから仕方がない、と思われていませんか?現在は、手術療法も進歩してきました。特に膝や股関節の人工関節の手術は非常に安定した成績を残しています。これらの人工関節の手術に関してはそれぞれのページをご覧下さい。
その他の関節、すなわち、手指、肘、足首、足趾でも手術は可能です。
- 関節痛がとてもひどい
- 関節が壊れてしまっている
- 手の指が動かなくなった
- 歩くのが困難
などの症状がございましたらご相談下さい。
関節リウマチにより右手の中指、環指、小指が伸びなくなる事があります。手関節の周りで指の腱がすれて、切れてしまうためです。このような場合、腱の再建を行うことにより、指が伸びるようになります。
関節リウマチに対する新しい治療法
治験薬について
残念ながら”のこぎりの歯”などの治療戦略にて抗リウマチ薬を使用しましても、関節リウマチの勢いをくい止める事が困難な患者様もいらっしゃいます。このような患者様に対しましては、やはり、新しい薬剤が必要だと考えます。従いまして、当科では積極的に治験薬を使用しています。
「治験薬だからこわい」とよく言われますが、当院など一般的な病院で行われる治験は、すでに安全性がほぼ確立した薬剤で、リウマチに対してどの程度効果があるかを調べるためのものです。全ての薬剤は治験を行わないと正式なお薬として認可される事はありません。新しい薬剤に関心がある方はご相談下さい。しかし、どのような薬剤でも副作用はあります。この点をご理解下さい。
原因がわからない関節炎
関節リウマチ以外にも、関節の炎症がおこる病気は多数存在します。原因がわからない関節炎でお困りの方はおられませんか?以下の病気でも関節痛や脊椎の痛みが起こってきます。
血清反応陰性脊椎関節症 | 強直性脊椎炎 乾癬 掌蹠膿疱症 クローン病 潰瘍性大腸炎 尿道炎などの炎症後の関節炎(反応性関節炎) |
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結晶誘発性関節炎 | 痛風 石灰成分がたまるためにおこる関節炎 |
更年期障害 | - |
上記の病気や症状などに思い当たる点がある方はご相談下さい。