病態
膀胱は、下腹部にあり、尿をためたり、排出する臓器です。
膀胱癌は、膀胱の中にできる腫瘍で全悪性腫瘍の1.5%を占め、60歳以上の高齢者に多く、男女比は3対1と男性に多い病気です。膀胱癌の発生因子には、喫煙、染料への慢性接触などがあります。症状は、肉眼的血尿や頻尿、排尿痛などの膀胱炎症状などで来院されることが多く、特に、症状がなくいきなり赤い尿が出る無症候性肉眼的血尿が多くを占めます。 診断は、膀胱鏡検査で行います。がん細胞があるかどうかを尿細胞診で、どのくらいひろがっているか調べるのに、エコー、CT、MRIなども行われます。
膀胱癌は、膀胱粘膜内にとどまる表在性癌と、筋層浸潤を認める浸潤癌に分けられます。表在性癌では、転移の可能性が低く、内視鏡手術で根治させることが可能です。しかし、浸潤性癌では、治療としては内視鏡手術での組織学的検査の後に、膀胱全摘除術などの治療法が必要となります。このほか、癌細胞の顔つき(異型度:GradeⅠ,Ⅱ,Ⅲに分けられます)によっても治療後の再発に差があります。
浸潤度と異型度の両者を確認することが、膀胱癌の治療計画で大事であり、まず初めに、内視鏡手術で組織を採取して、病気がどこまでひろがっているのか、あるいはどんな癌細胞であるのかを、まず組織学的に確認します。
膀胱癌治療の必要性と治療法選択
膀胱癌の治療法には、手術療法、化学療法(膀胱内注入療法、全身化学療法、骨盤動脈内注入療法)、放射線療法があります。治療効果では手術が最も有効です。手術療法には大きく2つあり、内視鏡手術の経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-BT)と、開放手術の膀胱全摘除術+尿路変向術があります。表在癌であれば内視鏡手術で根治させることが可能ですが、浸潤癌において手術での根治を目指すには、膀胱を全部摘除する必要があります。膀胱を摘除しますと、尿を体外に出すしくみを新しく作る(尿路変向術または代用膀胱造設術)必要がありますので、患者様には侵襲の大きな治療法となります。そこで、膀胱癌の下記の進展度分類に応じて治療法を決定していきます。
膀胱癌治療の必要性と治療法選択
T-原発腫瘍
- TX
- 原発層の評価が不明
- TO
- 腫瘍なし
- Tis
- 上皮内癌
- Ta
- 浸潤のない粘膜癌
- T1
- 原発層の評価が不明
- T2
-
筋層浸潤のあるもの
- T2a 筋層の半ばまで
- T2b 筋層の半ばを超えるもの
- T3
-
膀胱周囲脂肪組織への浸潤のあるもの
- T3a 顕微鏡的浸潤
- T3b 肉眼的(壁内に腫瘍のあるもの)
- T4
-
腫瘍が右のいずれかに浸潤するもの、前立腺、子宮、膣、骨盤壁、腹壁
- T4a 前立腺、子宮あるいは膣への浸潤
- T4b 骨盤壁あるいは腹壁への浸潤
N-所属リンパ節
- NX
- 所属リンパ節の評価が不可能
- NO
- 所属リンパ節転移なし
- N1
- 2cm以下の1個の所属リンパ節転移
- N2
- 2cmを超え、5cm以下の1個の所属リンパ節転移または5cm以下の他数個の所属リンパ節転移
- N3
- 5cmを超える所属リンパ節転移
M-遠隔転移
- MX
- 遠隔転移があるかどうか不明
- MO
- 遠隔転移なし
- M1
- 遠隔転移あり
表在性癌の治療
経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-BT)
尿道から内視鏡を挿入し、腫瘍を確認し、ループ型の電気メスで、根部より切除します。それにより、腫瘍の種類、深さ、異型度を知ることができます。この治療で表在性癌は根治できますが、根部に腫瘍残っていれば、浸潤性癌となり、さらなる治療が必要となります。 術後に、抗がん剤、BCGなどの膀胱内への注入療法を行うこともあります。
浸潤性癌の治療
膀胱全摘除術+尿路変向術
膀胱を全摘(男性:前立腺と尿道も摘除、女性:尿道と子宮と膣の一部を摘除することがあります)したあと、尿の出口を新たに作る方法です。尿管皮膚瘻、回腸導管、尿禁制型代用膀胱、自然排尿型代用膀胱などありますが、当科では、小腸の末端の回腸の一部を使用し、尿管をつなげる回腸導管造設術をおもに行っています。
全身化学療法(+放射線療法)
抗がん剤全身投与により、腫瘍や転移部位の縮小、消失を目的に行われます。この治療は、手術前や手術後に行われることもあります。また、抗がん剤動注併用放射線療法という、高濃度の抗がん剤を膀胱癌の栄養している動脈に注入し、さらに、膀胱部に放射線照射を行う治療法もあります。
終わりに
症状がなくいきなり赤い尿が出たら、泌尿器科においでください。